00262-041227 shio的マインドマップ利用法──MacPeople記事連動
本日発売されたMacPeople 2月号にマインドマップが特集されています。その中で、「使いこなしのポイント」として、4人の利用例が紹介されていますが、shioもそのうちのひとりとして掲載していただきました(67ページ)。そして、shioゼミ学生のあさみさんも掲載されています(66ページ)。
昨日のshiologyでも書きましたように、この取材はアンケートに書面で回答する形式で行われました(下記の(1)〜(5)は編集者からいただいた質問です)。shioはかなりたくさん書いて回答しましたが、当然のことながらごく一部分しか誌面には掲載されていません。そこで、編集者の許可を得て、ここにその全文(blog用に一部改変しました)を掲載いたします。MacPeople 2月号の誌面と合わせてご参考になれば幸いです。
なお、下記の原稿はOmniOutlinerで書いたあと、単純にHTML書き出したものです。文中でも述べているとおり、shioがマインドマップとしてMacを使うのはOmniOutlinerのようなアウトラインプロセッサだけです。ですので、OmniOutliner(アウトラインプロセッサ)の利用例としてごらんいただくために、あえてレイアウトを改変することなくここに掲載しました。 ●shio的マインドマップ利用法────────
(1) どんなことにマインドマップを使っていますか?(複数ある場合は、最も多く使う用途・目的)
研究や教育での利用
法律学の世界に身を置く私は、研究や教育において、マインドマップを2種類の用途に利用します。
i) アイディアの視覚化と
ii) 検討対象の構造把握
です。「マインドマップ」の語源からしてその本来的用途は i) ですが、 i) を行うにあたっても実は i) と ii) とを峻別することが肝要なのです。なぜなら、学問とは、客観的事実の正確な把握( ii) に対応)とそれに対する主観的アイディアの形成・表現( i) に対応)から成り立っているからです。その両者を的確に行う道具のひとつとしてマインドマップを用います。
見方を換えると、
i) のプロセスは主観の客観化であり、
ii) のプロセスは客観の主観化です。
ii) によって研究対象となる様々な社会的事象を正確に把握しつつそれに対する自己のスタンスを見定めてゆきます。その上で、それらの研究対象に対する自分のアイディアをあぶり出し、客観的に見える「形」にしてゆくのがi) のプロセスです。
では次にそれぞれ具体的に説明いたします。
i) アイディアの視覚化・客観化
なにかを創造するとき、頭の中にあるアイディアをマインドマップによって外部化することによって、視覚的・客観的に自分の考えを明らかにするために使います。形のないアイディアを「形」にするのです。それによって自分のアイディアがより立体的になり、全体構造が把握できるとともに、その核心・本質が明確になります。そのようにして自分のアイディアの全体像と本質が見えると、さらなる検討を要する点があぶり出されてきます。疑問や矛盾を発見することこそ学問の出発点ですから、この作業は学問において非常に有益です。
具体例としては、自分の学問的アイディアの形成と熟成、各種のブレスト(ブレインストーミング)、論文の構成、講義の構成、原稿の構成、商品の企画、ファイルメーカーでのデータベースの設計、商品のネーミングなどがあります。
ii) 検討対象の構造把握
なにかを理解しようとするとき、その全体像と各部の相互関係を把握するためにマインドマップを使います。たとえば、民法や著作権法など法令の体系把握、体系書の構成図、判例の事実関係・当事者関係の把握、法理論に関する学説の把握、法律的概念の相互関係探求、条文の法律要件や法律効果の分析など学問研究において使えるほか、組織キャンプにおけるグループ内の人間関係図(ソシオグラム)など多様です。これらを「マインド」マップと呼ぶかどうかは意見の分かれるところかもしれませんが、前述の通り、客観的事象を把握し理解してゆくプロセスは外界を自己の中に取り込んでゆくプロセス、つまり「マインド化」のプロセスだと思います。
私のゼミの学生の多くは、条文数1100以上の民法の構成を、マインドマップにしています。これを私は「民法地図」と呼んでおり、大学に入学したての学生たちに作成を勧めています(私は作成を「お勧め」するだけであって、「課題」という義務的なものではありません。やりたい人だけやればいい。それが大学です)。彼らは紙を何枚も縦横につなぎ合わせながら、広大なマップを描いていきます。この作業をすることによって、民法を学び始めるにあたって最初の「白地図」ができあがり、その後に長い期間(少なくとも大学在学中4年間)をかけて肉付け・色付けをしてゆく基礎となります。また、初めて出会うテクニカルタームを自分の手で書くことによって、法律用語に次第になじんでゆくことができます。
講義や講演での利用
講義の黒板の書き方はマインドマップ的です。また、講演をするときのKeynoteの画面はマインドマップ的です。それが講演や講義を聴く学生・聴衆の理解に資すると考えるからです。
(2) マインドマップを使って上の作業をするメリットは?
最大のメリットは右脳を有効に利用できる点です。左脳による論理的・言語的な理解と表現とともに右脳による感性的・空間的ポテンシャルを使うことによって、ものごとの本質がより早く的確に見えてくるのです。
(3) 使いこなしで工夫している点
工夫その1
「手書き」することです。つまり、Macは使わない。私は17年ほどMacを使っており、研究や生活の様々な部分でMacを活用しておりますが、その一方でMacを使うべきではない分野もまた多いと考えます。マインドマップはそのひとつです。理由はいくつかあります。
第一に、「書く」および「描く」という行為のチカラです。書くあるいは描くことによって脳が活性化します。
第二に、紙などにペンを走らせることによって得られるダイレクト感です。Macの画面は常にバーチャルな存在。画面に書く・描く行為は常に間接的です。やはり、直接描くダイレクト感は大切。
第三に、マインドマップの「存在感」です。画面に描いたものは簡単に消え去ります。しかし紙などに書いたものはモノとして存在し続ける。そのソリッド感が「主観の客観化」には必要なのです。
第四に、アイディアには広大なキャンバスが必要です。その点、Macの画面は狭隘すぎる(PowerBookG4は15インチ、研究室では23インチですが)。小さい画面ではアイディアも矮小化してしまいます。私は研究室にあるホワイトボードをよく使います。ときには、研究室内にある8人がけのテーブルそのものをキャンバスにすることもあります。その場合、個々の概念は小さな紙に書いて並べて行きますので、マインドマップというよりもむしろKJ法に近いです。また私の講義では黒板に講義の構成などを逐次マインドマップ的に描いていきます。その方が講義を聴いている学生たちの右脳を動員して、理解を促すことができると考えるからです。
工夫その2
齋藤孝先生ご推薦の三色ボールペンを併用することです。赤は客観的に最重要、青は客観的に重要、緑は主観。この3つを峻別しながらマップを描いてゆくことで、さまざまなものが見えてきます。 工夫その3
手書きが原則ですが、OmniOutlinerのようなアウトラインプロセッサの利用は有益です。「マップ」にこそなっていませんが、頭の中では樹形図を描きつつそれを原稿として書きつづっているのですから、思考の流れはすぐれてマインドマップ的です。この原稿もOmniOutlinerで書いています。(それを単純にHTMLに書き出してshiologyにアップしました。)
(4) これからマインドマップを使ってみようという人に、マインドマップに慣れるコツがあれば教えてください
ともかく描いてみることです。ルールはありません。自分に素直に思ったことを描く。それだけです。マインドマップは道具にすぎません。マインドマップを描くこと自体が自己目的化してしまうと、「きれいに」「きちんと」「正確に」描きたいなどという邪念がわいてしまいます。あくまでも前述の i)あるいは ii)が目的であって、そのプロセスを充実させるための道具がマインドマップであると考えることが大切だと思います。
ではその上でマインドマップに慣れるコツ。それは「マップ=地図」であることを意識することだと思います。つまり、オブジェクト相互の位置関係をよく考えながら描くのです。上下、左右、内外、前後、大小、長短、先後、明暗、濃淡、太細、早晩、速遅、新旧……。そういった関係を考えてそれをどうやったら的確に表現できるかを工夫しながら描いてゆく過程で、次第にその事象の実態が明らかになってゆくのです。その過程こそ、マインドマップの醍醐味です。そのおもしろさがわかってくると、なんでも「地図思考」をしたくなります。世の中が、立体的、空間的、映像的、有機的に見えるようになっていきます。
(5) 使っているマインドマップのソフトとハード
前述の通り、原則としてMacやソフトウェアは用いません。使うときもマインドマップ用のソフトではなくOmniOutlinerです。あえて利用するガジェットをあげるとすれば、デジタルカメラです。マインドマップを描いた研究室のホワイトボードや、自分の講義をした講義後の黒板を撮影しております。またOmniOutlinerを使うMacは、PowerBookG4やPowerMac G4 Cubeです。
しかし、そうは言っても私は、昔からマインドマップにMacを使えないか試行錯誤を繰り返しています。残念ながら現状では、(3)で述べた「手書き」のメリットを凌駕するほどの使い勝手が得られる環境には出会っておりません。
以上のような理由で、マインドマップを描く際、OmniOutliner以外はMacを使いませんが、それを人に見せる必要がある場合には以下のソフトウェアを使います。
OmniOutliner
OmniGraffle Professional
Keynote
です。なおMacOS 9以前はインスピレーションを愛用していました。
以上です。
本日の通常のエントリーは別立てにしました。261:041227をご覧ください。